シミットSimit
ドーナツ型で表面にゴマがまぶしてあるパンで立ち食いの王者。身が締まって噛み応えがあり、ちょっとコバラがすいたときの強い味方だ。愛嬌のある形や持ちやすさも好もしい。レトロなデザインの手押し車が街角に止まっていたり、山積みにした大きなトレイを頭に載せていたり、長い棒に輪投げの輪のように刺して渋滞の車の間を練り歩いたりと、街角のあちこちで見かける。
ここ数年は「シミットカフェ」が大流行。店先にシミットをはじめ、おかずパンや菓子パンを並べ、奥ではチャイやコーヒーとともにゆっくり座って食べられるよう座席がある。
17世紀のトルコの旅行作家エヴリヤ・チェレビは、「イスタンブールには70の店と300人のシミット売りが働いている」と記述した。500年もの間、このシミットのゴマ味とともに歩んできたトルコ人のシミットに対する愛着はひとしおだ。