野菜 肉 魚 乳製品 果物 穀物・豆類 木の実 パン 香辛料 飲み物 今が旬
トルコ料理はどうしてこんなに美味しいのでしょうか?冷製の前菜からメインの料理、独創的なスイーツや飲み物にいたるまで種類はとても多く、レストランでメニューを決めるのは、あれこれ迷いながらの「楽しい苦労」です。
豪華な宮廷料理の伝統が今に受け継がれ、遊牧民の知恵に満ちた素朴な料理が日常の食卓をにぎわせ、旅に出れば、侵略の歴史のあいだにとりこんだ近隣諸国の郷土料理や地方色豊かな料理にも出会える…。お皿を覗くだけで、長い歴史と文化の深さに圧倒され、よりおいしい料理を作ろうと腕まくりした数え切れないほどのシェフたちや主婦たちに敬意を表したくなります。
さまざまな調理法とバラエティに富んだ料理が編み出されたのは、豊富な食材が身近に手に入ったからこそでしょう。恵まれた気候・風土のおかげで食材はとても豊富。太陽をたっぷり浴びた野菜や果物、豆類や穀類、遊牧の時代から知り尽くした乳製品に肉、さらには国土の三方を取り囲む海から獲れる海産物…。トルコの食材を大公開します。
野菜
セブゼレルSebzeler
トルコは日本とほぼ同じ緯度に位置するので、お目にかかる野菜類も顔なじみのものが勢ぞろい。太陽の恵みをたっぷり浴びた形のいびつな新鮮野菜が自慢だったが、近年ではハウス栽培もさかんになり、形が整うにつれて味のほうはやや落ちた気がしなくもない。
肉
エトレルEtler
変わった食肉(イノシシとかウマとかイヌとか?)の習慣があるわけではなく、食べる肉類はごくオーソドックス。
魚
バルックラルBalıklar
国の三方を海に囲まれたトルコは、魚も豊富。黒海、エーゲ海、地中海、それにイスタンブールの内海・マルマラ海沿岸の人たちは、漁業をなりわいとして暮らしてきた人たちだ。高原を遊牧してきた肉食のトルコ人というイメージはここではちょっと通用しない。近年海の汚染で近海魚の種類が激減しているという。
乳製品
スット・ユリュンレリSüt ürünleri
遊牧民は大切に育てた牛や羊からとれる絞りたてのミルクをそのまま飲んだり、日持ちのする食品に加工したりして重要な栄養源にしてきた。遊牧民の末裔たるトルコの人たちも、だから乳製品をとても好みよく使う。とくにチーズの種類の豊富さとヨーグルトの食べ方のアイデアは、乳製品後進民族の日本人からみると眼を見張るばかり。
果物
メイウェレルMeyveler
野菜と同様、日本とよく似た顔ぶれが揃うが、変化に富んだトルコの気候は日本よりも一段とバラエティ豊かな果物を育んでいると言える。スイカならディヤルバクル、あんずならマラティア、といったぐあいに地域ごとの名産の果物はお国自慢のひとつにもなっている。夏のスイカの甘さ、冬のオレンジのみずみずしさは日本のとは比べものにならないほどだし、ライスボールの形をしたメロンや小ぶりな黄桃も出回る季節が長くてうれしい。太陽をたっぷり浴びたフルーツの濃い甘さは、フレッシュなままはもちろんのこと、ドライフルーツとして、スイーツにはもちろん、酒のつまみとしても好まれている。
穀物・豆類
穀物Tahıllar、Hububatlar、豆類Bakliyat
小麦が生産量・消費量ともに群を抜いているが、その他の穀類・豆類も豊富だ。体に優しくエネルギー源になり栄養も豊富な身近な食材として日々の食卓を賑わせる。
木の実・ドライナッツ
クル・イェミシレルKuru yemişler
トルコでも決して安価なものではないが、豊富に生産されるので、さまざまな料理や食卓に登場する。宮廷料理にはドライナッツがとてもよく使われてきた。収穫に手間ひまかかる高級品だったし、高カロリーのナッツ類は最高権力者のスルタンの滋養強壮のためでもあったと伝えられる。
パン
エキメッキレルEkmekler
トルコ人にとってなくてはならない食べ物とは、ずばりパン。三度三度の食卓にパンがないことは、あり得ないと断言してもいいくらい。テーブルにいつも山盛りあってなくなればまたいくらでも出してくれる。そう。水は有料だけどパンだけは食べ放題なのだ。アナトリア地方はかなり早い時期からそこに住む人々(アッシリア人、ヒッタイト民族、シュメール人など)が農耕生活を営んでいたことが知られているが、穀物をつぶして水と混ぜ合わせたものを熱い石の上で焼く、すなわちパンの原型を人類は12,000年も以前から知っていたとの説もある。トルコ国民が1年に消費する穀物は230kg(ちなみにドイツは74kg)という統計もあるそうな。
香辛料・ハーブ
バハラットラルBaharatlar、オトラルOtlar
香辛料市場として知られるエジプシャンバザールがあるおかげか、トルコ料理はさぞかし香辛料がふんだんに使われてスパイシーなのだろうと思われがちだが、味は意外にマイルドだし、すごく珍しい香辛料があるわけでもない。そうはいってもトルコ料理になくてはならない香辛料があるのも事実。最近では自然食ブームで、ハーブなども注目を集めている。
飲み物
イチェジェッキレルİçecekler
飲み物にはお国柄がよく出る。長い歳月を通して人々が好んできた飲み物や飲み方が受け継がれて今日にいたっているから。伝統の白く濁ったお酒ラク、どろりと苦いトルココーヒー、味そのものよりも作法がユニークなチャイ…。トルコの飲み物も、ひとつひとつ紐解くと歴史や文化が垣間見えて奥が深い。
念のため補足しておくと、イスラム教徒が99%を占める国とはいえ、お酒は堂々と飲んでよい。もちろん自国で生産もされているし簡単に手に入る。酒好きのトルコ人も多く、アルコール消費量も増加傾向にある。