今が旬 3月Mart

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パン生地を細い麺棒で薄く延ばし
春の訪れも近いサフランボルで、取材協力のお礼を言いにとあるお宅を訪ねたら、ちょうど一家の主婦がギョズレメを作っている最中でした。狙ったわけでもないのにごちそうのある場所にタイミングよく伺うことを、トルコでは「Kaynanan seni severmiş(あなたお姑さんに気に入られているわね)」などと言います。あまりのラッキーな展開に「そんなつもりで伺ったんじゃあ…」などと言いながらも、ちゃっかり座り込んでおばさんの手元を見守りました。

前もって寝かせてあったパン生地を細い麺棒で薄く延ばし、その中に具を入れて二つにたたみます。今日の具は、刻んだほうれん草を炒めたもの。それをsaç(サチ)と呼ばれる中華なべを裏返したような鉄板に載せ、表裏を軽く焼きます。トルコ各地でとてもポピュラーな軽食で、観光地でよく見かけるので立ち食い用のスナックかと思いますが、一般家庭でもこんなふうにごくふつうに作ります。
その中に具を入れて

おばさんは、何気ない手つきで手際よく次々焼いていきます。やがて焼きたてがお皿に載って目の前へ。さっそくほおばると、どこに秘密が隠されているのか、ほうれん草の旨みと薄皮のほんのり焼けた香ばしさがマッチして、どんな高級レストランにも負けないおいしさです。
「Çok güzel!!!(おいしーい!)」
「そうお?」
おばさんは、表情は変えませんがどことなく誇らしげです。結局、あつかましくも留守番のクルーの分までいただいてきてしまいました。
焼きたてがお皿に載って