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ケスタネKestane

ケスタネ

ケスタネ
栗の木は東アジアをはじめとする北半球の湿潤な地域に広く分布しているが、地中海地方では1000年ほどまえから食用に植林されてきたそうだ。トルコは年間で世界生産量の約10パーセントにあたる約5万トン(2000年)を生産し、世界第4位を誇っている。

15世紀オスマン帝国の宮廷の帳簿にも、炒めた玉ねぎやレーズンとともに炊く「栗入りピラフ」が載っているし、一般民衆のあいだでも甘くて腹持ちのする栗は「山のパン」と呼ばれて愛されてきた。とりわけブルサの栗は丸々太っていることで有名。大粒で質もよいため、オスマン帝国時代にはヴァクフ(国の、すなわち国民共有の財産)とされ、どの木からでも好きなだけ拾ってよく、市場で売ってもよかったそうだ。

イスタンブールでは栗は10月ごろから登場し始める。丸い鉄板の上に筋の入った栗をきれいに並べてひっくり返しながら焼いている。横には小さな台秤が置かれ、100g単位で売ってくれる。

栗を使ったお菓子の老舗といえば1930年創業の「カフカス」。創業者がブルサの大粒の栗に目をつけてこの地で栗菓子製造に乗り出す前、コーカサス(トルコ語でカフカスヤ)で菓子店を開いていたので、かの地への愛着を込めて名づけたとか。ブルサ自慢の大粒の栗を甘く煮たケスターネ・シェケリ(トルコ版「栗の甘露煮」)はヨーロッパのマロングラッセに比べて、栗そのものの風味をより濃く生かした懐かしい味わいがある。栗ごはんに栗きんとん…、栗を愛してきた日本人の味覚ともどこか共通するものがあるのかも。