イスタンブールの4月の空気には、まだまだ肌寒い中にもようやく冬をくぐり抜けた喜びが感じられる。3月の最終週末に時計を1時間前進させてサマータイムになったおかげで、日が暮れるのがぐんと遅くなって気分がいい。イスタンブールのシンボル、チューリップも咲き乱れている。
トルコの食材たちもこっそり「衣替え」している。冬じゅう、パザール(市場)で山盛りになっていたsıkma portakal(絞り用オレンジ)は、いつのまにか元気がなくなって、よく見ると腐っていたり傷んでいたり。毎朝の日課だった絞りたてオレンジジュースもしばらくお休み。
冬のあいだ朝食の楽しみだったカイマックも、春の訪れとともにスーパーの棚から姿を消す。トルコスイーツの店では季節に関わりなくあるが、朝食用には夏場は食べないものらしい。
春先の子羊はsüt kuzu(乳飲み子羊)などと呼ばれて、とくに柔らかいことで珍重される。羊肉に対する偏見がいっぺんに吹き飛ぶことまちがいなし。
食卓の定番野菜、トマトときゅうりも、目に見えて元気さを取り戻してきたようだ。冬のあいだは色白で味も薄い温室栽培だったのだけれど、これからは濃い味がぎっしり詰まったのが食べられる。これから色鮮やかな夏の果物も目まぐるしく登場して食卓を賑わしてくれるだろう。