ボザBoza
少量のアルコールを含んだ甘酸っぱい飲み物。秋も深まり寒さが身にしみる季節になると登場し、水ぬるむ春先になると姿を消す。冷たい飲み物なので飲んで体が温まるというものでもないのだけれど、なぜだか冬にだけ出現する。クリーム色でどろりとしていて、飲むとほんのり甘味を感じつつも口の中にピリリとしびれが走る不思議な飲み物だ。おいしいのかおいしくないのか、正直なところ判断に迷う。
原料は、キビ、オオムギ、コムギ、トウモロコシなどの穀物。これらを粉に挽き、胚芽を取り除いて粉を煎り、水を加えて煮立てる。発酵させるために古いボザかパン酵母を加えてしばらく置き、発酵したら砂糖を加えて出来上がり。紀元前4世紀には東アナトリアや中央アジアですでに飲まれていたらしく、現在もバルカンの国々やハンガリーやイランに同様の飲み物があるそうだ。トルコのボザはアルコール度数は2度以下だが、よその国のボザはもっとアルコール度数が高いらしい。コップになみなみと注がれたボザを飲むときはシナモンの粉をふり、レブレビ(煎ったエジプト豆)が脇に添えられる。
ボザを飲ませるところは「ボザハネ」と呼ばれた(「ハネ」はペルシャ語からきた単語で「家」や「場所」を意味する)。ボザハネはイスタンブールには16世紀ごろからあり、17世紀には300軒ものボザハネと1000人近いボザ屋がいたという記録が残されている。
オスマン帝国時代、アルコール類、コーヒー、タバコ、アヘンなどとともに、しばしば禁止と解禁に翻弄された。ボザのアルコール分はほかのアルコール類に比べたらささやかなものだが、それでも気持ちを高揚させ神経を脅かし人心を惑わすよろしくない飲み物と考えられたのだ。ボザにはアルコールを含むタイプとアルコールを含まないタイプとがあったが、見た目では区別がつかないため一様に禁止され、ボザハネはメイハネ(居酒屋)と同じ意味に理解され、閉鎖された。反対に、適量なら体を温め満腹感を与える、と歓迎されていた時代もある。
現在はスーパーなどでも見かけるが、いずれは忘れ去られていく運命にあるような気がしてならない。
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