3週間パムッカレにこもってTVロケの仕事をしていました。来る日も来る日もかんかん照りで直射日光がじりじり刺し、木陰もろくになく照り返しも鋭いという過酷な環境で、脱水症状になりかかりながら駆けずり回っていました。
パムッカレの隣村のカラハユットは、湯治場として滞在型のトルコ人観光客でにぎわうところです。夏休みを過ごしにやってきた家族連れも、この暑さではさすがに日中は出歩かず閑散としていますが、夕方6時過ぎてギラギラの太陽が優しくなってくると、そぞろ歩きを楽しみにどこからともなく出てくる人たちで小さな商店街は縁日のような賑わいになります。露天商が立ち食いのものをあちこちで売っています。焼きとうもろこし、ポップコーン、ギョズレメ(トルコ風クレープ)…。そこで珍しい「食材」を発見!
その名も「カール・シェルベット」。訳すと「雪のシャーベット」???
ブルダンという近隣の山の村で、冬の間降り積もった雪を溶けないように保存しておき、夏になるとそれを切り出してカラハユット村まで運んでくるそうです。ずだ袋に大切そうにくるまれたその雪を、アルミのコップでがりがりとかきながら、あらかじめチェリージュースを入れたプラスチックのコップにふわりと入れていき、最後にまたちょっとチェリージュースをかけてできあがり。プラスチックのスプーンで氷の山をシャリシャリと崩しながら食べます。脳天にキーンとくる冷たさ。最後はジュースがちょっと水っぽくなってしまうところまで、見た目も舌触りも日本の夏の風物「かき氷」にそっくりです。
トルコ人にとっても珍しいとみえて、「何これ?」「どこから運んできたの?」と道行く人からの問いが絶えません。こわごわと試してみるお客に「きっと病みつきになりますよ」と店番のおばさん。行列が出来るほどの人気です。
この「トルコ版かき氷」いつ誰が考え出したのでしょうか。ご主人と交代で店番に立つというおばさんの話では、彼らとその親戚だけがやっているとのことで、どうやら独占のファミリービジネスのようです。冬の間に降った雪を保存しておくだけですから元手はさほどかからないでしょうが、山から溶けないように運んでくる手間や、売れ行きが悪いと雪が溶けてガチガチに固まってしまうことを考えると、リスクもある商売なのかもしれません。
でも、この夏の盛りに体内に涼を呼びこみ暑さを忘れさせてくれる愛すべき食べもの。しかもここのは天然食材(?)の雪! 隣で売っているマラシュのアイスクリームがすっかりかすんで見えました。